『モンターク・モルゲン』誌

とのインタビュー

トロツキー/訳 湯川順夫

【解説】このインタビューは、ファシズムの勝利が1年後に迫ったきわめて切迫した状況のもと、ベルリンで発行されていた急進民主主義派の週刊誌『モンターク・モルゲン(月曜日の朝)』によって行なわれたものである。ここでトロツキーは、ドイツにおける主要な労働者諸組織(社会民主党系と共産党系)が現在の政策を続けるならば、「ファシズムの勝利はほとんど自動的に、しかも比較的短期のうちに実現する」だろうと予測しているが、この予測はきわめて正確なものであった。

L.Trotsky, Interview with Montag Morgen, The Struggle Against Fascism in Germany, Pathfinder Press, 1971.


  あなたは国家社会主義者(ナチス)による政治権力の掌握が切迫していると考えていますか。

  そうです。ドイツ労働者階級の最も重要な諸組織が現在の政策を続けるならば、ファシズムの勝利はほとんど自動的に、しかも比較的短期のうちに実現するでしょう。中央党がヒトラーの踏み台のようなものになるかどうかについては、当地よりもベルリンにいるほうがずっとよくわかるでしょう。そのことは決定的なことではありません。[ナチスと中央党の]二つの党のブロックは、結局、中央党の崩壊にいたる途上の短いエピソードとなるでしょう。その崩壊は、カトリック労働組合から始まるでしょう。ヒトラーは、議会主義の枠内にとどまる(ところで、彼は現在どこに位置しているのでしょうか?)と約束していますが、この約束は、いわば日本帝国主義が戦争で毒ガスを使わないと約束するのと同程度の重みしかありません。そのような約束を求めるのは問題外であり、それが守られると期待するのは愚の骨頂です。現実には、ヒトラーによる議会主義の公約を受け入れる政治家は、ドイツのファシズム化への道を意識的に掃き清めているのです。このことがドイツの人民ととりわけ全世界のプロレタリアートに対して何を予示しているかについては、繰り返す必要はないでしょう。

 

  あなたは、社会民主主義者と共産主義者が原則的な意見の相違をとりあえず棚上げにして共通の闘争組織をつくることが現下の緊急の必要であると考えますか。

  そうです。私は、共産党が社会民主党と自由労働組合指導部に対して、その下部から最上級の機関に至るまで、闘争のための協定を申し入れなければならないと信じています。装飾用の無力な「鉄の戦線」(1)と違って、ファシズムに反対する労働者階級の統一戦線は完全に具体的で、実践的で、戦闘的なものでなければなりません。その出発点はプロレタリア民主主義のすべての機関と成果を防衛することでなければならず、広い意味で野蛮状態から文化を守ることでなければなりません。

 共産党がこのような形で大胆かつ率直にイニシアチブをとるならば、共産党の権威がはなはだしく高まるだけでなく、ドイツの政治情勢も根底から変わるでしょう。独占ブルジョアジーは、ヒトラー独裁をもてあそぶことは内乱の炎をもてあそぶことであり、灰燼に帰すのは株式証券だけではないとすぐに感じはじめるでしょう。絶望に駆られてヒトラーの陣営に投じた膨大な数の無定形な大衆のあいだで、内部分化と分解の過程が必然的に進行するでしょう。まさに闘争の端緒において、力関係はファシズムにとって不利なものへと急激に変わるでしょう。壮大な展望が労働者階級とドイツ人民の前に開かれるでしょう。

 

  あなた自身、自分の名においてそのような組織のために活動する用意がありますか?

  もちろんです。私は、自分の多数のパンフレット――とくに最近の『次は何か』――で展開している戦術に理論的にだけでなく実践的にも完全に基礎を置いています。ドイツ労働者階級にとって他の道はないということが、日々あらたに確認されています。ドイツの運命の問題は、ヨーロッパとソ連邦の運命の問題であり、かなりの程度まで長い歴史的期間にわたる全人類の運命の問題です。いかなる革命家も、その力と運命をこの問題に従属させることを避けることはできません。

1932年5月12日

英語版『ドイツ・ファシズムに対する闘争』所収

『トロツキー著作集 1932』上(柘植書房新社)より

訳注

(1)「鉄の戦線」……1931年12月に社会民主党指導者が、労働団体や自由主義グループともに結成した「ファシズムに対する抵抗のための鉄の戦線」のこと。

 

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