社会主義労働者党の創設と
共産主義者の任務
トロツキー/訳 西島栄
【解説】これは、1931年10月に結成されたばかりのドイツ社会主義労働者党のフランクフルトのメンバーがトロツキーに宛てた手紙に対する返事である。この中でトロツキーは、左翼反対派と社会主義労働者党との関係について原則的な考えを示している。本邦初訳。
L.Trotsky, The Foudings of the German SAP, Writings of Leon Trotsky(1930-31), Pathfinder, 1973.
親愛なる同志諸君。
11月12日の手紙によって、あなたが私に対する信頼を示してくれたことに感謝します。あなたが社会主義労働者党のメンバーであるからといって、あなたが心配されているように、私があなたのことを「不誠実」だとかプロレタリア的統一戦線の「裏切り者」であるなどと非難するいかなる理由もありません。私は、あなたがプロレタリア革命についてまったく真剣であることを、豪も疑っていません。あなたの共産党批判は正しいものです。しかしながら、あなたが共産党に対置しているものは、首尾一貫して革命的な別の党ではなく、そのような党についてのあなた自身の観念です。その観念は素晴らしいものかもしれませんし、実際、悪くないものです。それにもかかわらず、あなたが言及している党は、今のところまで形成されていません。社会主義労働者党は、革命的マルクス主義とはまったく無縁で政治的に不適切な指導部をもった、かなり混乱した組織です。
あなたは自分のことを共産主義者と呼び、私が擁護する思想に連帯を表明しています。あなたは、社会主義労働者党を真のマルクス主義的共産主義の側に獲得することを自らの目標としています。当然のことながら、私はこの目標を歓迎するのみであり、私の力のおよぶ限りその方向でのあなたの努力に援助を惜しまないつもりです。しかしながら、私は、社会主義労働者党を、その現在の状況のもとでは、誰に対してであれ党として提示するつもりはありません。それは、むしろ、さまざまな諸潮流がそれぞれ自分の側にメンバーを獲得しようと競い合っている過渡的な組織です。したがって、このような過渡的な「党」の枠内では、あなたのようなマルクス主義的共産主義分子は、はっきりとした輪郭を持った政綱をそなえた分派を形成すべきであり、この成功のための闘争を公然かつ精力的に展開すべきです。
私は、あなたの提案する結論的考えには賛成しかねます。あなたは、すべての反対派的共産主義分子が社会主義労働者党に加入すべきと考えています。しかし、まず第1に、これらのさまざまな組織はまったく異なった傾向を持っており、――あなたが正しく指摘しているように――大衆的組織ではなく、カードル
[幹部活動家]の組織です。そして、カードルが価値を持つのは、彼らが自分たちの目標に関して非常に明確で自覚的な場合だけです。ブランドラー派や極左主義者、反議会主義者等々と統一することは、馬鹿げています。第2に、ドイツ共産党はその背後に数百万の労働者を従えています。まったく明らかなように、あなたはこのこの事実を過小評価しています。これらの労働者に影響を及ぼすことはできるし、そうすべきです。すべての問題が事件そのものによって最も先鋭な形で提起されている今日においてはなおさらです。共産党左翼反対派(ボリシェヴィキ=レーニン主義者)は、党から除名されたとはいえ、自らを共産党の構成要素とみなしており、あらゆる可能な方法を通じて、党のプロレタリア的メンバーに影響を及ぼそうと奮闘しています。明らかに、自ら社会主義労働者党になだれ込むことになれば、この課題ははるかに困難なものとなるでしょう。いや、そんなことはまったく問題になりえません。また、共産党が参加することもなく、共産党左翼反対派が社会主義労働者党との何らかの関係を持つようになることも、考えられません。しかしながら、左翼反対派は、社会主義労働者党の共産主義分派――そのようなものが実際に存在するならば――と共通の思想にもとづいて非常に密接で友好的な関係を確立することができます。その場合、組織的な構造はあまり厳格なものにするべきではないでしょう。
あなたは左翼反対派といかなる種類の関係を持ちますか? 左翼反対派の文献を受け取られますか?
私は大いなる関心を持って今後の発展過程を追いたいと思っていますし、私に最新の情勢を伝えてくれるならば非常にありがたいと思います。
革命的あいさつを持って。
1931年12月14日
英語版『トロツキー著作集 1930-1931』所収
本邦初訳
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