青年運動について

プラハの青年大会への国際左翼反対派所属代議員の声明 

トロツキー/訳 湯川順夫・西島栄

【解説】この声明は、当初プラハで開催される予定であった反ファシズム大会と同時に開かれる青年大会にあてたものである。この反ファシズム大会は結局パリで1933年6月に開催された。

 この声明の英訳が『トロツキー著作集 1932-33』(パスファインダー社)に所収されているが、この英訳はもともと当時の『ミリタント』に掲載されたものをそのまま転載したもののようである。だが『反対派ブレティン』掲載のロシア語原文と照らし合わせると、その内容はかなり異なる。次の一節がまるまる抜け落ちているだけでなく、多くの誤訳が散見される。

 「革命家は、通達や決議の丸暗記という立場に立つことはできない。革命家に必要なのは、批判的思考であり、判断の自主性であり、自ら獲得した確信を勇気をもって擁護する能力である。こうした資質は、本から得られた出来合いの公式によって習得されるのではなく、政治的経験の過程の中で育成されるものである。こうした資質の発展にとっては、ちょうど肺にとって空気が必要なように、党内民主主義の雰囲気が必要である」。

 今回この声明をアップするにあたって、ロシア語原文にもとづいて全面的に点検・修正している(題名もロシア語原文に沿って変更されている)。

Л.Троцкий, По повод юношеского движения, Бюллетень Оппозиции, No.34, Май 1933.


 世界の労働者運動は転換点に立っている。帝国主義反動、とりわけファシズムの一連の勝利の後では、プロレタリアートは、何年にもわたって厳しい試練と峻厳な闘争を経験しなければならないだろう。革命運動の連続性は、確信せる鍛え抜かれた戦士の新しい隊列がプロレタリアートの若い世代の中から登場するという条件があってはじめて保障される。

 社会民主主義は、ヒトラーを前にして逃亡したことで決定的に明らかにされているように、下僕を教育することはできても、戦士を教育することはできない。この党の学校には青年労働者が学ぶべきものは何もない。マルクスとレーニンの学校のみが、帝国主義とファシズムの災厄から社会主義の王国へと向かう道を青年労働者に指し示す。

 われわれボリシェヴィキ=レーニン主義者は青年労働者に共産主義インターナショナルの旗の下に結集するよう訴えていたが、それと同時に、共産主義の教義の歪曲とソヴィエト体制の官僚的堕落が青年労働者へのコミンテルンの影響とその正しい革命教育を著しく困難にしていることをはっきりと指摘することが必要であるとみなしている。

 教義の歪曲は、「一国社会主義」論において最悪の形で表現されている。この理論は、プロレタリア国際主義を掘り崩し、労働者の隊列の中のありとあらゆる種類の小ブルジョア的、反動ユートピア的、民族主義的傾向を隠蔽する役割を果たしている。

 国際左翼反対派(ボリシェヴィキ=レーニン主義者)は、その一連の綱領的文書の中で、官僚的中間主義(スターリニズム)が共産主義の理論と実践の中に持ち込んだ破滅的な歪曲をこの10年間の経験にもとづいて暴露してきた。この青年大会の場において、官僚制が党内に確立した党体制に対して、とりわけ力を込めて抗議しなければならない。なぜなら、この体制は、共産主義前衛の党内生活を圧殺し、青年の自立的発展への道を閉ざしているからである。

 革命家は、通達や決議の丸暗記という立場に立つことはできない。革命家に必要なのは、批判的思考であり、判断の自主性であり、自ら獲得した確信を勇気をもって擁護する能力である。こうした資質は、本から得られた出来合いの公式によって習得されるのではなく、政治的経験の過程の中で育成されるものである。こうした資質の発展にとっては、ちょうど肺にとって空気が必要なように、党内民主主義の雰囲気が必要である。

 盲目的服従は、資本主義的軍隊の兵士の美徳ではあっても、プロレタリア戦士の美徳ではない。革命的規律は、集団的な思想と集団的意志にもとづいている。科学的共産主義の理論を支持する者は、言葉で物事を判断しない。彼らは理性と経験によってすべてのことを判断する。青年は、命令によってマルクス主義を受容することはできない。青年は、自立した思考活動を通じてマルクス主義をわがものにしなければならない。まさにそれゆえ、青年は、学ぶだけでなく、誤りを犯す可能性をも持たなければならない。自らの誤りを通じて自立的に共産主義的認識にまで高まっていくためにである。官僚的規律は偽りの規律であり、危機の瞬間にこなごなに砕け散ってしまう。革命的規律は、討論や批判の自由を排除するものではなく、逆にそれらを要求する。そのようにしてこそはじめて、無敵の革命的団結がつくり出せるのである。

 青年労働者は、共産主義政党からの指導を必要としている。だが、これは命令による指導であってはならない。説得がことごとく強制にとって代わられるとき、生きた精神と、それとともに生きた人々が組織から消えてなくなることになる。

 労働者陣営内部におけるさまざまなグループや分派間の闘争において、われわれは、迫害や中傷や暴力的制裁の方法を拒否するだけでなく、それらを容赦なく糾弾しなければならない。こうした醜悪きわまりない方法は、共産主義的教育の諸手段と何ら共通するものはない。このやり方は、この10年間にスターリニスト官僚によって労働運動の中に持ち込まれたものであるが、プロレタリア前衛、とりわけ青年の気分を毒し、共産主義組織を広範な労働者大衆から孤立させている。

 共産主義の旗のもとに結集している青年労働者は、スターリニズムによって塩漬けにされた革命的教義を浄化し党体制を健全化しようとするボリシェヴィキ=レーニン主義者(国際左翼反対派)の闘争を援助し、それによって、共産主義インターナショナルをマルクスとレーニンの道に復帰させなければならない。

1933年4月10日

『反対派ブレティン』第34号

『トロツキー著作集 1932-33』下(柘植書房)より

 

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