中国と日本との闘争

南条氏への回答

トロツキー/訳 西島栄

【解説】本稿は、日本の大新聞社からのインタビューの申し入れに対してトロツキーが与えた回答である。この回答の中でトロツキー派に皮肉を交えつつ、極東情勢に関する自分の見解をごく簡単に述べている。

 L.Trotsky, The Sino-Japanese Struggle, Writings of Leon Trotsky(1937-38), Pathfinder, 1976.


 8月6日、日本の2大新聞『東京日日』と『大阪毎日』を代表するS・南条氏は、私にインタビューの申し入れを書面でよこしてきた。彼の質問は、ソ連、日本、中国の関係に関するもの、および、最近の粛清が赤軍に与える影響はいかなるものか、将来、ソ連内部での変化が生じる可能性はあるか、についてであった。南条氏に対する私の回答は以下の通りである。

 

1938年8月7日

S・南条氏(『東京日日』および『大阪毎日』代表)

モンテホ・ホテル

パセオ・デ・ラ・レフォルマ 240

メキシコ、D.F.

 

  拝啓

 極東における情勢および、ソ連と日本との関係に関して、貴方の代表するような大手の新聞の前で自分の見解を述べることができることは、私にとって望外の喜びであります。しかしながら、その途上に立ちふさがる障害は、事実上、克服不可能なのではないかと懸念しています。あなたの出した質問リストを見るかぎり、私の回答が日本の外交政策とその国内体制の利益にかなうように利用できるものと貴紙は想定されているようです。もしかしたら貴紙の経営陣は、ソ連の報道機関の誤った情報にもとづいてこのような結論に至ったのではないかと思われます。しかし、私の真の見解は、モスクワの報道機関が述べているものとまったく何の共通点もありません。

 日本と中国との闘争において、私は全面的かつ完全に中国の側に立っています。スターリン体制に対する私の非和解的対立にもかかわらず、ソ連と日本とが衝突した場合には、私はソ連が進歩を代表し、日本が反動を代表するものであると考えています。今度大規模な軍事衝突が日ソのあいだで生じた場合、日本は、ちょうど第1次世界大戦のときにツァーリ帝国が被ったのと同じ社会的・政治的破局をこうむるでしょう。私はこのことにいかなる疑いも持っていません。

 これが私の真の見解であり、私はこれを、完全な無知の状態に力づくでとどめおかれている日本人民に知らせるべく、喜んでより発展させ具体化させるつもりです。しかし、極東における情勢を嘘偽りのない形で解明した見解を、貴紙が掲載するかどうかについて、私はきわめて疑わしく思っています。

 この点に関してもし私が間違っているならば、私は、当然のことながら、自分の誤りを喜んで認めます。しかし、その場合、貴方の質問に対する私の回答を、完全な形で、いかなる変更もなしに掲載することを全面的に約束していただかなければなりません。

 敬具

レオン・トロツキー

 

 この手紙に対して、南条氏は、質問に対する私の回答を掲載することはできないとの返事をよこし、インタビューを断ってきた。

1938年8月11日

『エル・ウニベルサール』『エル・ナシオナール』8月12日号掲載

『トロツキー著作集 1937-38』(パスファインダー社)所収

『トロツキー研究』第35号より

 

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