ＰＯＵＭの指導者、アンドレウ・ニンがバルセロナで逮捕されたとき、ゲ・ペ・ウの手先が彼を生きて返さないということにいささかの疑う余地もなかった。スペインの警察を掌握しているゲ・ペ・ウがニンおよびＰＯＵＭの全指導部をフランコの「手先」であるとして告発したとき、スターリンの意図は誰の目にもはっきりと露わになった。

　この告発のでたらめさは、スペイン革命に関する最もありふれた事実を知っているすべての者にとって明白であった。ＰＯＵＭ党員はスペインの全戦線で英雄的にファシストと闘っている。ニンは、古参の清廉潔白な革命家である。彼は、ソヴィエト官僚の手先からスペインとカタロニアの人民の利益を守った。まさにそれゆえ、ゲ・ペ・ウはバルセロナ監獄に対する十分に準備された「襲撃」という手段を使って、彼を抹殺したのである。スペインの公式当局がこの事件でどのような役割を果たしたのかという問題は、いぜんとして推測の域にとどまっている。

　ゲ・ペ・ウにデマを吹き込まれた外電記事はニンを「トロツキスト」を呼んでいる。殺害されたこの革命家は、しばしばこの呼び方に抗議していたが、その抗議はまったく正当であった。マウリンとニンの２人の指導部のもとで、ＰＯＵＭは相変わらず第４インターナショナルに敵対しつづけた。たしかに、１９３１〜３３年の時期、当時まだＰＯＵＭを結成していなかったニンは、私とのあいだで友好的な手紙のやり取りを続けていた。しかし、早くも１９３３年初めには、原則問題に関する意見の相違がわれわれのあいだの完全な決裂をもたらした。それから４年間というもの、われわれは論争的論文だけをやり取りしてきた。ＰＯＵＭはその隊列からトロツキストを排除した。ゲ・ペ・ウは、ソヴィエト官僚制に反対するすべての人々をトロツキストと呼んでいる。これによって、彼らの血なまぐさい復讐が容易になるのだ。

　私とＰＯＵＭとを引き離している意見の相違とはまったく別に、ニンがソヴィエト官僚制に対して遂行していた闘争においてニンが正しかったことを認めなければならない。彼は、モスクワで権力を握っている徒党の外交的策謀と陰謀から、スペイン・プロレタリアートの独立性を防衛しようと努力した。彼は、ＰＯＵＭがスターリンの手中の道具になることを望まなかった。彼は、スペイン人民の利益にとって致命的なゲ・ペ・ウとの協力を拒否した。これが彼の唯一の「罪」であった。そして、この罪の代償を、彼は自分の命であがなったのである。