中央委員会・中央統制委員会合同総会
(
10月総会)決議同志トロツキーの手紙に関連した党内情勢の問題について
/訳 西島栄
【解説】これは、1923年の10月25日から27日にかけて開催された中央委員会と中央統制委員会の合同総会(10月総会)の決議である。この総会は、10月8日のトロツキーの手紙(第1の書簡政綱)と10月11日の「46人の声明」の問題を討議し、それらを分派的行動であると糾弾する決議を圧倒的多数で採択した。しかし、この決議は公表されないことが同時に決定された。その理由は、トロツキーの書簡と「46人の声明」そのものを党員の目に触れさせないためであった。
この総会では公式の速記録はとられていないが、当時スターリンの秘書であったバジャーノフが個人的にスターリンとトロツキーの結語だけ簡単な記録にとどめている。トロツキーの発言の主要な部分は、ダニーロフの「われわれはトロツキーを認識しはじめている」(『思想』1996年4月号)に抜粋されている。この総会の雰囲気については、クルプスカヤがジノヴィエフの宛てた同年10月31日付の
手紙で知ることができる。Постановление объединенного пленума ЦК и ЦКК РКП(б) от 25-27 Октября 1923 г., Известия ЦК КПСС, No.10, 1990.
(a)同志トロツキーと46人の同志たち(プレオブラジェンスキー、オシンスキー、サプローノフ、他)の声明について
(賛成102票、反対2票、棄権10票)(1)
1、中央委員会と中央統制委員会と10大党組織(ペトログラード、モスクワ、イワノ=ヴォスネセンスク、ニジニ・ノブゴロド、ハリコフ、ドネツク、エカテリンブルク、ロストフ、バクー、トゥーラ)の代表者の総会は、同志トロツキーと46人によって提起された政治局に対する非難を本総会の場で討議し、政治局、組織局、書記局の政治路線と実践的活動を完全に承認し、政治局多数派の回答を本質的に正しいものとみなす。
2、中央委員会と中央統制委員会と10大党組織の代表者は、国際革命とわが党が経過しつつあるこの決定的な瞬間になされた同志トロツキーのこの行動を、深刻な政治的誤りとみなす。その理由はとりわけ、政治局に対して向けられた同志トロツキーの攻撃が、客観的に分派的行動の性格を帯び、党の統一に打撃を与え、党の危機をつくり出すからである。同志トロツキーは、彼が取り上げた諸問題を提起するにあたって、唯一許された道、すなわち同志トロツキーの属する諸機関の討議にそれらの問題を前もって付すという道をとるのではなく、個々の党員に対する訴えを通して問題を提起することを選んだことを、総会は遺憾の念をもって確認する。
同志トロツキーの選んだ道は分派的グループ形成の合図となった(46人の声明)。
3、中央委員会と中央統制委員会と10大党組織の代表者の総会は、46人の声明を分派主義的・分裂主義的政策への一歩として断固糾弾する。たとえ、この声明の署名者たちがそれを意図していたのではないにしても、そのような性格を帯びるのである。この声明は、来たる数ヶ月のうちに党生活の全体を党内闘争に巻き込みかねない危険性を帯びており、そうすることで、国際革命の運命にとって最も責任重大な時期に党を弱めることになるだろう。
4、本総会は、個々の党員が党規約にもとづいて中央委員会の政策全体およびその決議を批判的に検討する権利を保障することを自明の義務とみなすものであるが、同時に、党内における分派的グループ化およびその組織解体的な言動と闘争することをも義務的なものとみなす。本総会は、開始された党内闘争が今後――現在の同志間論争の対立的雰囲気の中で――党内で許容された制限を越えてしまうことのないよう、中央統制委員会が党の統一のために必要なあらゆる措置をとったとの確信を表明する。
5、中央委員会と中央統制委員会と10大党組織の代表者の総会は、同志トロツキーに対し、今後、彼も構成員であるすべての中央党機関とソヴィエト機関の実践的活動により緊密かつ直接に参加するよう提案することを決定的に必要なものとみなす。
6、本総会は、政治局が当時の状況からして、直接政治局に矛先を向けた同志トロツキーの手紙と46人の声明が流布されるのを禁止できなかったことを理解する。論争を広範な討論の領域に移してただちに臨時総会を召集するべきだとする計画を政治局は拒否したが、それは党の統一を守る上でまったく正しい選択であった。本総会は、あらゆる資料を踏まえた上で、今や、すでに開始された分派的論争を停止させることを自らの責任とみなす。総会は、われわれがすでに直接的な闘争期と呼ぶことのできる時期に入っている(ドイツの事件、戦争の可能性、等々)とみなす。中央委員会と中央統制委員会と10大党組織の代表者の総会は、現時点では政綱にもとづく分派的討論を禁止することが全党の意見であることを確信する。
7、総会は、責任重大な決定を下さなければならないこれからの時期において、政治局がとりわけ友好的かつ緊密に活動しなければならないとみなす。それと同時に、総会は、この困難な時期に中央委員会に対して完全な信頼と不動の支持を与えることこそが、党のすべての活動的同志たちの革命的義務であるとみなす。
(b)党内民主主義について
(全員一致で採択)
中央委員会と中央統制委員会の総会は、政治局が時機を失せず設定した党内民主主義に向けての路線、および、政治局の提起した、「権力濫用」と一部の党分子へのネップの堕落的影響に対する闘争の強化を、全面的に承認する。
総会は、政治局と9月総会によって設定された各委員会の活動を加速させるために必要なあらゆることをするよう政治局に勧告する。1、「鋏状価格差」委員会、2、賃金委員会、3、党内情勢委員会。
政治局は、これらの問題に関して必要な措置を策定するとともに、その実施をただちに開始し、次の中央委員会総会でこの問題に関する報告をしなければならない。
1923年10月25〜27日
『ソ連共産党中央委員会通報』1990年第10号
『ニューズ・レター』第35号より
訳注
(1)この投票(トロツキーの要求で点呼でなされた)の内訳は、議事録にあるものと食い違っている。この総会では三つの決議案が投票にかけられた。一つ目の決議案は、ウクライナの代議員を代表して中央委員候補のラドチェンコが提案したもので、政治局多数派の立場でトロツキーを非難するもので、これが総会では採択された。二つ目の決議案は、中央委員のゴンチャロフが提案したもので、政治局多数派とトロツキーとの和解を主題にしており、117人の投票参加者のうち7票の賛成を得た。最後の三つ目の決議案は反対派のプレオブラジェンスキーによって提案されたもので、1票しか獲得しなかった。また12人の参加者が棄権した。
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